キャラクターのつくり方 物語に必要なキャラクターの役割9選
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物語には「すべてのキャラクターに役割を与えよ」という鉄則があるわけです。
好みのキャラクターをでたらめに配置すればいいわけではなく、古典演劇のように「必要最低限のキャラで物語が回る」ように、設定されていなくてはいけないんですな。
自分はこれが苦手で、ついつい無関係なキャラを量産してしまうクセがあります、ぐぬぬ。
ということで、今回は「物語に最低限必要なキャラクターの種類9選」を考察しました。
いろんな本を参考にした独自考察なので、あくまで参考程度に。
事前に「ストーリーのつくり方」にも目を通していただければ、より理解すやすいかもしれません。
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- もくじ
1 キャラクターの役割9パターンを考察
本記事の執筆にあたり、まずは映画、ゲーム、小説など、色んなジャンルのシナリオ術の本をAmazonで注文して読みました。一部の本は記事末で紹介しています。
で、おおよそどの本でも述べられている見解をまとめた結果、物語を回すために最低限必要なキャラクターの役割は以下9つかなと。
- 主人公
- パートナー
- ヒロイン・ヒーロー
- メンター
- ピエロ
- 厄介者
- ライバル
- ラスボス
- 小悪党
一人の人物が複数の役割を兼ねたり、途中で役割が変化することもあります。
ちなみに、ゲームの場合はこの9つ以外の特殊な役割を持ったキャラも必要なので、ゲームシナリオを書く場合は「ゲームキャラクターのつくり方」もご参照くださいませ。
ストーリー性があるゲームは、キャラクターの良し悪しが評価に直結するわけです。 ちなみに、キャラクター創作の基本は「キャラクターのつくり方 物語に必要なキャラクターの役割9選」でも考察してるのでご参照くださいませ。 ただ、 […]
1-1 主人公
- 物語のなかで「変化する」人物
- 最初は誤った考え方をもっている
- 早い段階で好感を抱かれるシーンが必要
はじめに決めるべきは「主人公」の存在でしょう。
多くのシナリオ・プロット本は「物語は『主人公の変化』のことである」という見解で一致しています。
つまり主人公を決めるときは、見た目や性格、特殊技能を決めるだけではなく「この人物はどんな変化を遂げるのか」を決めておく必要があるわけですな。
たとえば、「トイ・ストーリー」や「アラジン」のように、最初は「誤った考え方」で世界を見ていた主人公が、パートナーとの友情やボスとの戦いを経て「新しい価値観に目覚める」のが一般的でしょう。
ただ、誤った考え方の主人公を見せなくてはいけない冒頭では、読者に嫌悪感を抱かれて途中離脱される危険性もあります。
そんなときの解決策は「SAVE THE CATの法則」が有名なので、なるべく早い段階で取り入れたいところですな。
脚本家にはお馴染みの「セーブ・ザ・キャットの法則」というテクニックがあるんですよ。 ざっくり言うと「ヤクザ者でも、ネコを助けるエピソードを見せれば好感度が上がる」心理のことで、たとえばディズニー映画「アラジン」の冒頭で、 […]
たとえばアラジンは、「盗み」という悪行を働いていますが、腹を空かせた子供にパンを分け与える良心があることを冒頭で視聴者に伝えています。シュガーラッシュのラルフも、仕事を失ったキャラクターにチェリーを恵んでいましたな。
1-1-1 ニセ主人公
主人公のように見えて主人公ではない(つまり変化しない)キャラクターもいます。
たとえば、「パイレーツオブカリビアン」のジャックスパロウや、「ドラえもん」のドラえもんなどがそうです。
書籍「売れるストーリーの作り方」では「狂言回し」の名称でよばれていますが、この手のキャラクターは物語のアイコンにはなるものの、厳密には主人公ではありません。
「ドラえもんをキッカケに、のび太が成長する」ように、主人公に変化を与えるキッカケとして利用されることが一般的です。
1-2 パートナー
- 主人公の理解者であり側近
- 見た目や特技は主人公と異なる
- 主人公との仲が決裂するシーンがある
パートナーは、主人公の理解者として側近になってくれるキャラクターです。
見た目や特技は主人公と異なることが多いですが、価値観は主人公と近いので、主人公の言動に「共感」「同情」を示してくれます。「進撃の巨人」のアルミン、「ハリー・ポッター」のロン、「銀魂」の新八などがわかりやすい例かもしれません。
パートナーは主人公の味方ですが、途中で仲が決裂するシーンが挿入されることがあります。
具体的には「ストーリーのつくり方 3-8崩壊」のあたりで、一度主人公と別れるものの、最終的に仲直りすることでドラマを盛り上げるパターンが多いですな。ディズニー映画「ズートピア」のニックとジュディの関係性がわかりやすいかもしれません。
1-3 ヒロイン・ヒーロー
- 「読者」にとってのセックスシンボル
- その世界で一番の美女、イケメンがセオリー
- 「報酬」として主人公のモチベーションになる
ヒロイン・ヒーローは、いわゆる「セックスシンボル」ってやつです。
主人公からだけでなく「読者にとっても」恋愛対象となるキャラクターのことで、その世界で一番の美女、イケメンとして描かれます。
「魔法陣グルグル」のククリのように「1-2パートナー」の役割を兼ねることもありますが、基本的には「報酬」の役割を与えられることが多いです。
報酬というと景品みたいで聞こえが悪いですが、ようするに「主人公は問題を乗り越えることでヒロイン(ヒーロー)と結ばれることができる」みたいなかんじですな。たとえば「魔王を倒して姫と結婚」などは古典的でしょう。
ヒロインキャラのつくり方を考察した記事もあるので参考程度に。
男性読者向けの漫画やゲームに欠かせない「ヒロイン」を恋愛心理学的に魅力的にする方法を考察してみます。
1-4 メンター
- 主人公に知恵を与え、導く存在
- 年老いているので第一線では戦えない
- 途中退場することが多い
メンターは賢者として主人公に知恵を与え、導いてくれる存在です。
「ハリーポッター」のダンブルドア校長や、「ドラゴンボール」の亀仙人がメンターの典型で、主人公よりかなり年上で、世の中の酸いも甘いも知り尽くした老人キャラとして登場します。
メンターは「老いのせいで全盛期の実力が出ない」という制限が与えられていて、主人公を直接サポートすることができません。
主人公に対しておこなえることは「トラブルを代わりに解決してあげる」ことではなく「解決のアドバイスを与える」ことのみです。
メンターは「主人公をかばって途中で死ぬ」など、物語から途中退場させられることもあります。
いずれにせよ、何らかの理由をつけて「自分では戦えない」存在にしなくてはいけません。じゃないと「お前が敵と戦えばええがな」と思われてしまいますからね。
1-5 ピエロ
- 場の空気を盛り上げてくれる
- 解説役になってくれる
- ダークな空気を緩和してくれる
ピエロは、場の空気を盛り上げてくれるコミカルなキャラです。
アメリカのホラー映画には必ずピエロが一人いて、コミカルで寒いギャグで空気を緩和してくれていますな。
ピエロは「主人公の代わりに状況を説明させる」など、解説役として使われることもしばしばです。「ジョジョの奇妙な冒険」のスピードワゴンや、ポルナレフは、ピエロとして場を和ませつつ、敵の能力を丁寧に解説してくれていました。
ちなみに、無口でクールなダークヒーローが主人公の場合、「1-2 パートナー」としてピエロを配置して空気の重さを緩和することがあります。
「闇金ウシジマくん」の江崎、「ミナミの帝王」の竜一などが参考になるかもしれません。
1-6 厄介者
- 主人公にトラブルを与える
- 読者をイライラさせる
厄介者は、主人公にトラブルの種を運んでくる面倒な存在です。
たとえば、映画「ロッキー」のポーリー、「アラジン」のアブーは、悪気はないものの主人公に厄災を運んでくるキャラクターでした。
厄介者は無鉄砲な言動で読者をイライラさせることがありますが「主人公は過失がないのにトラブルに巻き込まれた」とアピールするために不可欠な存在です。
中途半端にイイ奴にしようとするより、面倒なキャラとして極端に描いたほうがよさそうな気がします。
1-7 ライバル
- 主人公と目的は同じだが価値観が違う
- 主人公へのアンチテーゼを代弁させる
ライバルは「主人公と目的は同じだけど価値観が違う」存在です。
たとえば、主人公と同じ「魔王を倒す」という目的で旅をしていても、戦い方や仲間との接し方で主人公と衝突します。「スラムダンク」の流川楓、「るろうに剣心」の斎藤一がわかりやすいかもしれません。
具体的には、主人公の価値観へのアンチテーゼ(反対意見)を代弁ことがライバルの役割となります。
たとえば主人公が「魔物とも話し合いたい」という価値観をもっているなら「そんなやり方じゃ大事な人が殺されるぞ?話し合いなど不要だ」みたいな価値観をぶつけてくるわけですな。
1-8 ラスボス
- 「変化」のために乗り越えるべき最強最大の敵
- 主人公の変化を阻止しようとする
ラスボスは、主人公が「変化」のために倒さねばならない最強最大の敵です。ラスボスを倒すことが主人公の最後の試練であり、それを果たせば物語はエンディングを迎えます。
ラスボスは、主人公の変化を阻止しようとする存在です。
ライバルのように「主人公へのアンチテーゼ」を語ったり「世界の半分をやるから部下になれ」など、甘い誘惑をささやいてきます。ようするに主人公に「ドラマも変化もないスタートの状態にもどれ」と諭してくるわけですな。
もちろん主人公は「変化」を選ぶのでラスボスと対峙することになり、負ければバッドエンド、勝てはハッピーエンドになります。
1-9 小悪党
- 主人公の引き立て役
- ご都合主義には注意
ラスボスの後ろで「そこにシビれる!憧れるゥ!」みたいなことを言ってるザコキャラです。
主人公の引き立て役として成敗されるのが役割で、早々にかませ犬になって退場します。刺身の甘みを引き立てる塩みたいなもんですな。
ただ、見せ方によってはご都合主義に見えてしまうので注意が必要です。
たとえば「小悪党登場→ヒロインピンチ→助けにくるヒーロー」のパターンは王道ですが、タイミングが良すぎたり、非現実的なシチュエーション(広大な砂漠でヒロインを探している状況など)では、ご都合主義に見えてしまうので気をつけたいところですな。
2 キャラクターづくりに役立つ本3選
最後は恒例の「一歩先をゆくスキルが身につく本」紹介コーナーです。
今回は漫画やラノベのキャラクターづくりに役立ちそうな本を3冊ご紹介します。
2-1 感情類語辞典シリーズ
鉄板ですが「リアリティあるキャラクター」の創作には感情類語辞典シリーズでしょう。
性格ごとによくある悩みや、言動、家庭環境などを心理学的にまとめてくれている本で、気が向いたときにパラパラめくるだけでも楽しいですよ。
2-2 キャラクターからつくる物語創作再入門
「物語の中で主人公の心情はどのように変化させればいいか」の考察に特化した本です。
シナリオやプロットの型を解説している本は多いですが「主人公の変化」だけに特化した本は珍しくて参考になりました。
2-3 ゲームシナリオ入門
ゲームシナリオに特化した知識が学べる本です。
ゲームのキャラは漫画や小説とは少し違っていて「ゲーム特有の役割」「ゲームキャラの注意点」みたいなもんがあるそうな。
ゲーム制作をしていてその辺のことの理解を深めたい方におすすめです。分厚いですが、分かりやすいのでサクサク読めるのではないかと。