ストーリーのつくり方 時代を超えて愛れされる物語12の法則

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ゲームや映画の評価を左右するものといえば「物語の完成度」でしょう。

読者に愛される物語を書きたいと思うのが作家の性分というものですが、言わずもがな、それは簡単なことではありません。

ところが、最近は物語の研究(※1)が進み、読者から好感を得やすい「物語の型」をまとめた本も増えてきました。

自分は仕事のために漫画、ゲーム、小説など様々なジャンルの本を読んでいますが、時代を超えて読者に好まれる「物語の型」はどうやら共通みたいなんですよ。

てことで今回は「名作物語に共通する12の法則」をまとめます。

ストーリーの型は色々あるので「一つの参考例」として考えていただければと。

1 ヒーローズ・ジャーニー理論とは

時代を超えて愛されるシナリオの型といえば「ヒーローズ・ジャーニー理論」が有名です。

ヒーローズ・ジャーニー理論はジョゼフ・キャンベルの「神話の法則」を基にクリストファー・ボグラー(ライオンキングの脚本家)が考案したプロット。

神話や聖書、近代のハリウッド映画まで、数千年にわたって人々に好まれ続けてきた物語の型のことです。

ざっくり言うと、以下のような型で展開されます。

  1. 平和な世界にいた人物が
  2. 事件をきっかけに成長し
  3. 敵を倒して宝を手に入れる

思い当たる物語がちらほらありますな。

たとえばピクサーの名作映画「トイ・ストーリー」では、以下のようなかんじです。

  1. 平和な日常を生きていたウッディが
  2. ライバルのバズとの確執をきっかけに成長し
  3. ピンチを切り抜けて「友情」という宝を手に入れる

「物語は主人公の変化を描くものである」という格言があるように、平凡だった人物が英雄(ヒーロー)に変化していく様子を描くことが、ヒーローズ・ジャーニーなわけです。

コーネル大学の研究(※1)でも、ヒーローズ・ジャーニーに似たプロットの映画がもっともヒットしやすいことが分かっています。

「王道の物語は書きたくない」と思う方もいるかもしれませんが、「型を知ってれば型破り、型を知らないのは形無し」という言葉もありますので、まずは王道の型を覚えておくと、後々色んな物語をつくりやすくなるかもしれません。

2 三幕構成とは

12幕の構成を考える前に、まずは「三幕構成」を考えましょう。

三幕構成は映画シナリオでおなじみの構成法で、物語で主人公の身に起きるできごとを「①始まり②中盤③終わり」に分けて組み立てます。

  1. 始まり:問題が起きて「日常」が崩壊する
  2. 中盤:問題解決のために主人公は「変化」を試みる
  3. 終わり:主人公が「変化」し「始まり」より良い日常が手に入る

2-1 ①始まり:主人公の日常が崩壊し問題が現れる

「始まり」では、主人公の日常を崩壊させるトラブルや敵が登場。その問題を解決するために、主人公はしぶしぶ問題解決を強制されます。

  • トイ・ストーリー:バズに人気者の座を奪われる
  • アラジン:牢に投獄され魔法のランプをとりにいかされる
  • アンチャーテッド:先祖が残した宝の地図を発見する

2-2 ②中盤:問題解決を試みるが裏目に出る

「中盤」は、問題を解決するために主人公が色々葛藤するパートです。

たとえば、主人公が問題解決のために最善だと思って選択したおこないが、逆に不幸を招くパターンが一般的ですな。

  • トイ・ストーリー:バズの人気を落とそうとするが、逆に仲間からの人気を失う
  • アラジン:自分を王と偽って信頼を得るが、嘘だとバレて信頼を失う
  • アンチャーテッド:先祖の宝を見つけるも、それは「人を不幸にする宝」だった

解決策が間違っていたことを知り、主人公は「変化」を決意します。

2-3 ③終わり:主人公の成長で状況が変化する

主人公は「本当に大切なこと」を見つけて変化し、問題を解決。エンディングを迎えます。

エンディングは「①始まり」と似たような舞台にしつつ「始まりより良くなっている」ことを見せるのが一般的です。

  • トイ・ストーリー:バズと協力し問題を解決。いままでの日常がよりにぎやかに。
  • アラジン:ありのままの自分で信頼を勝ちとる。ドブネズミのような日常が豪華に。
  • アンチャーテッド:敵を倒し宝は海の底に沈める。財宝のかわりに「愛」が手に入る。

3 三幕構成を細分化した12幕構成

以上のように物語の基本は三幕構成です。しっくりこないなら、何度でも練り直すべきでしょう。

三幕構成がまとまったら、さらに細かくプロットを作り込んでいきます。今回は、名著「SAVE THE CATの法則」などを参考に、12幕の構成にまとめてみました。

3-1 日常

「①始まり」のスタートです。

主人公がどんな日常で生きているかを描きます。時代、場所、生活レベル、周囲の人々との関係性、などですね。

「日常」では、主人公の性格の問題点も浮き彫りにする必要がありますが、主人公の問題点を強調しすぎると読者が嫌悪感を抱いて、その場で読むのをやめてしまう危険性もあります。

それを防ぐには「SAVE THE CATの法則」で言うところの「ネコを助けるようなエピソード」を利用するのがベターでしょう。

たとえば、盗人のアラジンがお腹を空かせた子供にパンを分け与えるシーンは、アラジンへの好感度を落とさないために重要なエピソードです。

3-2 事件

日常を切り裂く事件、トラブル、出会が起こり、主人公は否応なしに「非日常」に放り出されます。RPGでよくある「主人公の村を魔物が襲撃」などの展開がわかりやすいですな。

ここまでが「物語のツカミ」でして、作品の10%以内に収めるのがセオリーだそうです。

主人公に誤った選択をさせたり、至らなさを見せておくと、終盤での「変化」が際立つようになると思います。

3-3 決意

問題解決のために、主人公がしぶしぶ変化への挑戦を決意するパートです。

「しぶしぶ」というのがポイントで、主人公は自分の意思ではなく「3-2 事件」の影響で仕方なく変化を迫られる傾向にあります。

よって、この時点で主人公が考えている問題の解決策は、間違いであることが多いです。

たとえば、アラジンは「宮殿に住めれば幸せになれる」「金持ちになれば幸せになれる」と考えていますが、物語の中盤でそれは誤りだと気づくわけですな。

「①始まり」はここまでです。

3-4 困難

「②中盤」のスタートです。

主人公は問題解決のために試行錯誤しますが、まったくうまくいきません。

ライバルが強大だったり、主人公に才能がなかったり、足を引っ張る人物がいたり、理由は色々ですが、一番の問題は「誤った解決策」を試していることです。

たとえば、トイ・ストーリーのウッディは、自分の地位を上げるためにバズの人気を落とそうとします。もちろん「誤った解決策」でしょう。

名作ゲーム「アンチャーテッド」のネイトも、先祖の汚名を晴らす財宝を見つければ自分は幸せになれると考えていますが、実際はそうではないわけです。

3-5 導き

メンター、仲間、アイテムなど、なにかが問題解決の糸口を主人公に与えます。

たとえば「アラジン」なら、ランプの魔人ジーニーの登場がこのあたりです。シンデレラでいえば、魔法使いがやってきて、かぼちゃの馬車やドレスを与えてくれるシーンですな。

3-6 ニセの解決

「3-5 導き」で与えられた糸口をたよりに、主人公は一時的に問題を解決したように見えるシーンです。

たとえば、アラジンは魔法でニセの王様になり王宮に招かれることに成功。シンデレラは舞踏会に行くことができるようになります。

3-7 ニセの勝利

ニセの解決策のおかげで、主人公は「ニセの勝利」を手に入れます。

アラジンでいえば、ジャスミンと魔法のじゅうたんで「A Whole New World」を熱唱している頃。シンデレラでは王子とダンスを踊っているあたりでしょう。

おそらくどんな読者も「ニセの勝利」のシーンでは心がザワザワと落ち着かなくなると思います。

主人公の勝利が「間違った解決策」や「ウソ」によりもたらされているからです。

ようするに「この後、どん底に落ちるんでしょう?」という破滅の予感が漂っているわけですよ。アラジンのウソはバレるし、シンデレラの魔法は解けると、読者は知っているわけです。

3-8 崩壊

「3-7 ニセの勝利」でうやむやにしていた問題が発覚し、積み上げてきたことが崩壊します。

アラジンはウソがバレ、シンデレラは魔法が解け、ウッディが自分のせいでもう家に帰れないと落胆するシーンです。アンチャーテッドでは、主人公のネイトが「もう冒険はやめだ」と諦めの一言を放つのが恒例となっていますな。

重要なのは、主人公が「崩壊の原因は自分がニセの解決を良しとしたせいだ」と理解し認めている姿勢です。

自発的に気づくパターンもあれば、仲間からの叱咤で気づくパターンもありますが、いずれにせよどん底に落ちた主人公は「このままではダメだ」と気づかなくてはいけません。

3-9 気づき

主人公は「本当の解決策」「本当にやるべきこと」に気づきます。

たとえば、トイ・ストーリーのウッディは、本当にやるべきことはバズ二人一緒に家に帰ることだと気づきました。

主人公は「本当の解決策」を頼りに、もう一度問題を解決するために立ち上がります。

この時点で、主人公は「3-1 日常」から精神的な変化を遂げたことになりますね。

「②中盤」はここまでです。

3-10 再挑戦

「③終わり」のスタートです。

「3-9 気づき」で得た解決策を武器に、最大の敵と戦います。いわゆるラスボス戦ですな。

たとえば、アラジンはジャファーと闘い、ウッディとバズは引っ越しのトラックに向けて走り、ネイトは財宝で世界を支配しようとする悪者を追いかけます。

もちろん再挑戦は一筋縄ではいきませんが「この戦いに勝利すれば主人公の問題は解決しそう」という予感があることが大切です。

ちなみに、このあたりで主人公と周囲のわだかまりが解けて、主人公を応援する声が多くなってきたりします。ウッディが他の仲間たちからの信頼を取り戻すシーンは象徴的でしょう。

3-11 勝利

敵を倒し、問題を打破します。

問題を打破する方法は「伏線」を活かしたり、頭をひねったアイデアを用いることが多いです。

トイ・ストーリーでは冒頭で披露された「バズが飛べる」という設定が活かされ、アラジンでは「ランプの魔人は自由を奪われる」という設定が活かされていました。

面白いアイデアを思いつくための習慣をまとめた記事もあるので、興味があればご参照くださいませ。

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3-12 ヒーローの帰還

問題が解決し「宝」を手に入れたヒーローが帰還することで、物語は終わりを迎えます。

言わずもがな「宝」は金銀財宝のことだけではなく「愛」「友情」「平和」など、形がないものであることが多いです。

主人公は「1 日常」と同じような舞台に主人公が戻ってきますが「宝」を手に入れたことで周囲の環境が「変化」しています。

トイ・ストーリーはアンディの部屋でのシーンに戻りますが、ウッディとバズの関係性が良くなり、お互いオープニングより幸せそうになっていました。

このように、世に語り継がれている名作を「ヒーローズ・ジャーニー理論」に当てはめて考察してみれば、ストーリーづくりの参考になるかもしれません。

以上です。

4 プロットを書くスキルが身につく本3選

恒例の「一歩先をゆくスキルが身につく3冊」紹介コーナーです。

今回はプロット作りのスキルが身につく本を3冊ピックアップしました。

4-1 物語の法則 強い物語とキャラを作れるハリウッド式創作術

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「ヒーローズジャーニー理論への理解が深まる本」といえばこの本でしょう。

ヒーローズジャーニーだけじゃなく、おとぎ話系プロットや、キャラクターのつくり方まで学べます。

この手の本にしては「読みやすい」のもナイスなポイントですね。読書慣れしていない方でも読みやすいのではないかと。

電子書籍化されてないのだけが残念なんですよねぇ。

4-2 SAVE THE CATの法則

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SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術

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王道ですが、シナリオやプロットを書くうえで必須の参考書といえば「SAVE THE CATの法則」でしょう。

映画に詳しくないと事例にピンとこないのが難点ですが、外国産の本にしては読みやすいですし、シナリオを書くうえで重要な心構えや、環境のつくり方も勉強できます。

4-3 まんがでわかる物語の学校

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もっと読みやすい本がいいなら「まんがでわかる物語の学校」がおすすめです。

電子書籍版は若干解像度が低くて文字が読みにくいのが残念ですが、ヒーローズ・ジャーニー理論はもちろん、昔話からホラーまで様々な物語に用いられている技法が学べます。

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