創作キャラのプロフィール表を心理学的につくる方法
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「キャラのプロフィール表をつくればキャラに深みが出るぞ!」
みたいなことが言われているわけです。
たとえば「HUNTER×HUNTER」の冨樫義博先生や、「ジョジョの奇妙な冒険」の荒木飛呂彦先生は、履歴書のようなキャラクタープロフィール帳を用意していることが有名ですな。
プロフィール表からメリットが得られるメカニズムは以下のようなかんじです。
- プロフィール表をつくることで作者がキャラを隅々まで理解できる
- 「このキャラならこの場面でどう行動するか」が浮かぶようになる
- 作者が意図しないアイデアが生まれ物語に深みが出る
ポイントは「自分(作者)ならどう行動するか」という主観的な視点と「あの人(キャラ)ならどう行動するか」という第三者視点を切り離せることでしょう。
てことで今回は「キャラプロフィール表に必要な項目」を心理学的に考察してみます。
これまで当ブログでメモしてきた心理学的なアプローチで考えていますので、興味があれば参考程度に。
- もくじ
1 プロフィール表の項目
結論からいうと、以下の項目を埋めればキャラの性格を把握しやすいのではないかと思います。
1-1 基本の設定
- 役割
- キャラデザイン
- 名前
- 年齢
- 職業
- ビッグファイブ性格特性
- 使用できる技・武器(ゲームの場合)
1-2 バックボーンの設定
- 職業
- 髪型
- 体型
- 服装
- 特技
- 弱点・弱み
- 口調
1-3 価値観の設定
- 信じている常識(バイアス)
- お金や健康への考え方
- どうしても許せないこと
- 幸せを感じること
- 改善したいと思ってること
- 夢や目標
- 性的願望やフェチ
- 趣味や興味
かなり多くなってしまいましたが、ここまで決めればかなり人間味あるキャラが出来上がるのではないかと。
簡略化したいなら「1-1 基本の設定」だけでも大丈夫ですが、キャラデザをイラストレーターに外注したいときは「1-2 バックボーンの設定」も決めておいたほうがやり取りがスムーズに進むようになるのではないかと思います。
ちなみに、これらの項目は書き留めていないと忘れてしまうので「ストーリープロッター」や「Nola」で管理するのがおすすめです。
Nolaは、作家さん専用の小説執筆ツールです。原稿の執筆だけでなく、プロットの作成・登場人物の設定など物語を書く上で必要…
2 基本の設定
基本の設定は「とりあえずこれだけ決めてれば問題ない」という最低ラインのプロフィールです。
- 役割
- キャラデザイン
- 名前
- 年齢
- 職業
- ビッグファイブ性格特性
- 使用できる技・武器
2-1 役割
「物語に必要なキャラクターの役割9選」に書いたように物語のキャラには役割が必要と言われています。
たとえば役割ごとのルールは以下のような感じですね。
- 主人公:物語の中で『変化』を遂げる人物
- ヒロイン:読者にとってのセックスシンボル
- メンター:主人公に助言し導く存在
- ライバル:主人公と同じ目的を持つが価値観が違う
- ラスボス:主人公の『変化』を邪魔する存在
ちなみにゲームキャラクターの場合はゲーム独自の役割もあるっぽいので「ゲームキャラクター5つの型」をご参照ください。
ストーリー性があるゲームは、キャラクターの良し悪しが評価に直結するわけです。 ちなみに、キャラクター創作の基本は「キャラクターのつくり方 物語に必要なキャラクターの役割9選」でも考察してるのでご参照くださいませ。 ただ、 […]
2-2 キャラデザイン
創作キャラのデザインは「キャラクターの性格や特性」を反映させるのがセオリーと言われています。
たとえば力強い戦士は眉毛を太くゴリマッチョに、魔法使いは華奢でとんがり帽子…みたいなかんじですな。詳しくは「3 バックボーンの設定」で解説します。
ちなみにキャラクターの印象は髪型である程度操作できることがわかっています。
「キャラクターの性格の印象を髪型で操作する方法」にまとめてあるので興味があれば参考程度に。
「キャラの印象は髪型で決まる」という説があるわけです。 たとえば、「強さ」をスキンヘッドで表現したり、「少女っぽさ」を二つ結びで演出するのはキャラの特徴付けの鉄板ですな。 でも具体的に、髪型と性格の印象ってどれぐらい関係 […]
2-3 名前
名前は「読みやすく、覚えやすいほどいい」[1]という研究データがあります。
逆に読みにくい名前は嫌悪感を抱かれやすいので注意。というのも、人はイライラを責任転換するバイアスがあるので「文字が読めなくてイライラ→こんな名前のこいつが悪い!」と変換してしまうんですよ。
てことで名前は読みやすく、覚えやすくしたほうが良いと思う次第です。
あと外見にステレオタイプがあるように(魔法使いは華奢で帽子など)名前にもステレオタイプがある[2]と言われています。
たとえば「アントン」という名前なら屈強そうな戦士、「マリア」なら清楚な女性…みたいな感じですな。これも「覚えやすさ」に起因すると思うので参考程度に。
2-4 年齢
キャラクターの年齢は自由に決めて構いませんが、迷ったら「役割」「職業」「バックボーン」を加味するといいかもしれません。
たとえば主人公はターゲットとなる視聴者層からの共感を得やすいように「ターゲットの年齢と近くする」のがセオリーと言われていますが、主人公を導く役割のメンターは役割上、知識が豊富じゃないといけないので年齢が高めに設定されていることが多いです(ハリーポッターのダンブルドア、ドラゴンボールの亀仙人など)
ちなみに男性読者に好まれやすい女性ヒロインの年齢は12~16歳だそうな。
詳しくは「男性読者が好むヒロインキャラの特徴3選」をご参照ください。
男性読者向けの漫画やゲームに欠かせない「ヒロイン」を恋愛心理学的に魅力的にする方法を考察してみます。
2-5 職業
職業は作者の好みで決めて構いませんが、ゲームの場合は「職業=キャラの能力」としてプレイヤーに認識されます。
たとえば漫画や小説なら「職業は魔法使いだけど、魔法は使えず武闘派」というキャラも面白いですが、ゲームでそれをやろうとするとプレイヤーの脳が混乱してしまうのでむずかしいです(もちろんあえてそうする技法もありですが)
前述したようにプレイヤーが感じるイライラは「作者への嫌悪感」として受け取られるので、なるべくプレイヤーをイライラさせないように職業はキャラクターの性格や能力と一致させたほうがいいかもしれません。
2-6 ビッグファイブ性格特性
キャラクターの性格をより人間らしくしたいなら「ビッグファイブチャート」を作ってみるといいかもしれません。
ビッグファイブ性格特性は心理学でもっとも多く使われている性格診断で、人間の性格を5つの性質のパラメータで表現した診断法のこと。
5つの性質は以下のとおりです。
- 外向性:積極性や社交性、性格的明るさなど
- 神経症的傾向:傷つきやすさ、メンタルの脆さなど
- 開放性:チャレンジ力、創造性など
- 誠実性:忍耐力、自制心、集中力など
- 協調性:輪を乱さない、空気を読む力など
たとえば以下のようなチャートをキャラクターごとに用意しておけば、キャラクターの性格を把握しやすくなります。
各性質の特徴をご紹介しましょう。
外向性
自分の「外側」と「内側」どちらに興味があるか示す度合い
- 高い人:自分より他人や周囲に興味があるので積極性、社交性が高い
- 低い人:他人より自分の内側に興味があるので創造性、問題解決力が高い
神経症的傾向
メンタルの安定度合い
- 高い人:洞察力があるが凹みやすい
- 低い人:何事にも動じないが他人の痛みに無頓着
開放性
「好奇心」「チャレンジ意欲」の度合い
- 高い人:飽きやすいが新たな発見をしやすく芸術肌
- 低い人:保守的で一つの物事への対応に強い
誠実性
コツコツ頑張り抜く力の度合い
- 高い人:自制心、忍耐力、集中力がある
- 低い人:飽き性だが型にハマらない発想ができる
協調性
輪を乱さない、空気を読む力の度合い
- 高い人:道徳的で周囲を調和できる
- 低い人:孤立するほど光るカリスマ性がある
ビッグファイブで分かる向き不向き
ビッグファイブが便利なのは「このキャラクターはこの場面でこんな言動をするだろうか?」という判断がしやすくなることです。
たとえば王様に「魔王を倒す旅へ出るのじゃ」と言われたときのリアクションも以下のように異なると予想できます。
- 外向性が低い:仲間はいらないから一人で旅立とう
- 神経症的傾向が高い:家から出たくないんだけど
- 開放性が高い:そんなことより王様ハゲてんな
- 誠実性が高い:まずはコツコツレベルを上げよう
- 調和性が高い:まずはパーティーのみんなと仲良くならなきゃ
ビッグファイブは奥が深いので人生に活かすには色々勉強が必要ですが、創作キャラの性格に利用する分にはざっくりした知識でも問題ないと思います。
2-7 使用できる武器・技
ゲームの場合、キャラクターが装備できる武器や使用できる技もメモしておくといいでしょう。
たとえばAさんはアタッカータイプ、Bさんは補助タイプ、というようにゲーム上の役割に応じて割り当てればOKです。
3 バックボーンの設定
バックボーンの設定は「キャラクターに深みを与える設定」です。
物語の中でエピソードとして語られることもあれば、語られないこともありますが、以下のようなことを設定します。
- 職業
- 髪型
- 体型
- 服装
- 特技
- 弱点・弱み
- 口調
3-1 職業
「2-5 職業」で決めた職業に対し「その職業に就いた理由」を設定します。
たとえば職業が学校の先生という設定の場合も、理由が変化すればキャラクター像が違ってきますね。
- 学生の頃の恩師に憧れて教師になった
- 回りに流されるまま成り行きで教師になった
- 女子生徒にモテたくて教師になった
ビッグファイブで決めた性格特性を参考にしてキャラを深堀してみるといいかもしれません。
3-2 髪型
「2-2 キャラデザ」で決めた外見に対し「その髪型をしている理由」を設定します。
髪型も 職業と同じように、キャラクターの性格や人間関係など、これまでの生き方が反映されるポイントです。
たとえば、生き方を変えると決意したキャラクターが髪型を変更するエピソードがある作品も数多くあります。
- バスケに真剣になった桜木花道はリーゼントを坊主に変える(スラムダンク)
- 好きな男の好みに合わせて髪を伸ばしていたアスカは自立のため髪を切る(りぶねす)
「2-2 キャラデザ」で述べたように髪型はキャラクターの性格を反映したものとして受け取られやすいので、キャラの性質に合った形にしたいですな。
3-3 体型
「2-2 キャラデザ」で決めた外見に対し「その体型になった理由」を設定します。
体型も「これまでの生き様」が反映されやすいポイントですな。たとえば「太った体型のキャラ」がその体型になった理由も色々考えられます。
- 社会人になって好きなだけお菓子が変えるようになったので太った
- 元々スリムだったが彼女に振られたショックでドカ食いし太った
- 遺伝的にそういう一族の生まれだった
3つ目の「遺伝的に~」はギャグ漫画とかでありそうな設定ですね。
3-4 服装
「2-2 キャラデザ」で決めた外見に対し「その服装をしている理由」を設定します。
服装もまたキャラクターの個性や生き様が反映されるポイント。たとえばワンピースを着ている女の子がいたとして、その理由は色々考えられますね。
- カレシにプレゼントされたから好んで着ている
- 特売で安く手に入ったから着ている
- 自分でつくった服の試作品として着ている
余談ですが「学生は制服」「医者は白衣」「農民は作業服」のように職業を反映したステレオタイプな服装にすると職業の説明を省略できて便利です。
3-5 特技
キャラクターの特技と「その特技を習得した理由」を設定します。
たとえば指圧マッサージが得意なキャラの場合も「マッサージを習得した理由」によって物語に深みが出ますね。
- 高齢な親に孝行するうちに上手くなった
- 毒親にマッサージを強要されるうちに上手くなった
- なんとなく特技がほしくて通信講座で学んだ
たとえば漫画「ケンシロウによろしく」はマッサージ師の主人公がマッサージを取得した経緯のエピソードで笑いを誘っています。
Amazonでジャスミン・ギュのケンシロウによろしく(1) (ヤングマガジンコミックス)。アマゾンならポイント還元本が多…
3-6 弱点・弱み
キャラクターの「弱点と弱み」を設定します。
弱みを開示した人物のほうが好感度が上がるのは「共感できるキャラをつくる「弱点の設定」の正しい使い方」にも書いたとおりです。
「好かれるキャラをつくりたければ欠点を与えよ」という定説がありますが、シチュエーションを間違えると逆効果になることもあるんだそうな。てことで今回は「共感できるキャラをつくる弱点設定の正しい使い方」を考察します。
ポイントは「苦手な対象」を設定するだけではなく「なぜその対象が苦手なのか」の理由をエピソードとして描くことです。
たとえばドラえもんなら「ネズミが弱点」という設定そのものより「なぜネズミが苦手になったのか」というエピソードの部分にキャラの深みが宿るわけですな。
3-7 口調
「口調」のバックボーンもキャラクターの性格に深みを出すポイントです。
たとえば丁寧な言葉づかいのキャラがなぜ丁寧口調なのか?という理由も色々考えられます。
- 名家の育ちで言葉づかいを厳しく注意されてきた
- 丁寧な言葉が必要な職業に就いていてプライベートでもその癖が抜けない
- 嫌われることを恐れていて極端に丁寧に接してしまう
以上がバックボーンの設定でした。
4 価値観の設定
価値観の設定は「キャラクターの性格や言動の指針」です。
とどのつまり人は価値観に従って行動するし価値観が一致する人物に好感を抱きます。
キャラの価値観をしっかり定めたうえでプロットを練れば、矛盾した行動を防止できたり、ご都合主義な印象を避けることができるのではないかと思います。
- 信じている常識(バイアス)
- お金や健康への考え方
- どうしても許せないこと
- 幸せを感じること
- 改善したいと思ってること
- 夢や目標
- 性的願望やフェチ
- 趣味や興味
2~8は「セルフディスクロージャー」という名称で一括りに考察します。
4-1 信じている常識(バイアス)
人は脳には進化の過程で刻み込まれた「バイアス(思い込み)」が備わっています。
たとえば以下のようなバイアスが代表的です。
- 感情バイアス:自分に都合がいい情報だけを見て、都合が悪い情報に蓋をするバイアス
- ダニングクルーガー効果:能力が低い人ほど自分の能力を高く見積もってしまうバイアス
- 計画錯誤:予定や計画に必要な時間を甘く見積もってしまうバイアス
- 嫌儲バイアス:営利目的の活動をみると「きっと悪いことに違いない!」と思うバイアス
バイアスはキャラクターの「人間らしさ」を演出するのにとても役立ちます。そもそも人間はバイアスだらけで、不合理で、不完全な生き物だからです。
逆にバイアスを抱えていない人間は人間らしさがなく「なんか漫画っぽいな」みたいな印象になりがちなので注意しましょう。
バイアスの種類は「バイアス知識入門」で一覧しているのでご参照ください。
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4-2 セルフディスクロージャー
人は「自分と似た価値観の人物に好感を抱きやすい」ことはご周知のとおりです。
この考え方は創作でも同様であり、ノースウェスタン大学がエンタメ好きを対象におこなった研究[3]では、多くのユーザーは「自分と似ているキャラクターを好きになる」傾向があることがわかっています。
共通点をきっかけに親近感や好感を感じる現象は、心理学ではセルフディスクロージャーと呼ばれていて、以下の項目が一致する人物には親近感が湧きやすいそうです。
- 信じている常識(バイアス)
- お金や健康への考え方
- どうしても許せないこと
- 幸せを感じること
- 改善したいと思ってること
- 夢や目標
- 性的願望やフェチ
- 趣味や興味
各項目の細かい説明は「読者が「自分と似ている」と共感できるキャラをつくる方法」にまとめているのでご参照ください。
漫画やラノベには「感情移入できるキャラをつくるべし」という鉄則があります。 この鉄則には科学的な根拠もあり、たとえばノースウェスタン大学がエンタメ好きを対象におこなった研究[1]では、多くのユーザーは「自分と似ているキャ […]
ついでに、前述した研究[3]では「読者は自分のダークサイドを反映した悪役を好きになる」ことも分かっています。
これも以前「熱狂的に愛されるカリスマ悪役キャラのつくり方」でまとめてるので合わせて参考にどうぞ。
たまに主人公より熱狂的なファンを獲得している悪役がいるわけです。 たとえばバットマンのジョーカー、ジョジョの奇妙な冒険のDIO、ハリポッターのヴォルデモートなど、そういった「カリスマ性ある悪役」がいると物語が盛り上がるよ […]
以上です。