心理学的に創作キャラの性格をリアルにするバイアス知識入門

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名作には必ずリアルなキャラクターがいるわけです。

そういえば「進撃の巨人」のライナーは自分に都合がいい嘘を並べたり、罪悪感でメンヘラになったり、少年漫画のキャラと思えないほど人間くさいキャラでしたな。

本題ですが、創作キャラを人間くさくしたければ「人間がどんな思考をもっていて、どんな決断をしやすいか」を知るのが一番でしょう。

今回は心理学で「バイアス」と呼ばれる人間の思考パターンを色々ご紹介します。

創作キャラの性格をつくるときはもちろん「自分はどんな人間だろう」という自己省察や「読者はどんな作品を好むだろう」というマーケティング分析にも役立つと思うので、興味があれば参考程度に。

1 バイアスとは

前述したように、バイアスは進化の過程で脳に備わった「思い込み」のことです。

たとえば「多くの人が言ってることは正しいに違いない」と判断してしまう人気優先バイアスはあなたも経験があるのではないでしょうか。

自分はAmazonで買い物するときレビューの星の数が気になったりすると「あー人気優先バイアスにかかってるなー」と感じます。

こういったバイアスのおかげで私らは迷わずスピーディーに物事を決断できますし、サバンナでの生存競争に勝ち残って子孫を残せました。

ただ現代はサバンナと状況が変わり過ぎたせいで、バイアスが「得」より「損」を招くことが多くなっています。

たとえば、前述した「人気優先バイアス」にかかっていると、企業やメディアの意向でムダな商品を買わされまくります。ビジネスで成功するには「人と違うこと」をやる必要があるので、成功からも遠ざかってしまいそうですな。

というようにバイアスは往々にして「不合理」です。だからこそバイアスまみれのキャラクターはリアルな性格になります。

てことで、これから紹介するバイアスをキャラの思考パターンに組み込めば、共感されやすいキャラができあがるかもしれません。

2 バイアス一覧

てことでバイアスを色々並べます。今後もどんどん追加していく予定です。

2-1 インパクトバイアス

自分の未来の幸せ、または不幸を必要以上に大きく見積もってしまう心理。

  • 「結婚したら幸せかと思ってたけど、そうでもなかったなぁ」
  • 「受験に失敗したら人生終わりと思ってたけど、そうでもなかったなぁ」

2-2 現状維持バイアス

変化をおそれ、現状を維持しようとし続ける心理のこと。

  • 「この会社はブラックで最悪だ。でも転職はめんどうだし、このまま続けよう…」
  • 「今のパートナーとの関係に明るい未来を感じない。でも2年も付き合ってるし…」

2-3 利用バイアス

真っ先に思い浮かんだ選択肢を最善だと思ってしまう心理。

  • 「テレビで良いって言われてたから、糖質制限ダイエットしよう」
  • 「ネットでみんなが「無理」と言ってるから、在宅ワークは諦めよう」

2-4 サンクコストバイアス

投じた時間やコストを回収したくなってしまう心理のこと。

  • 「この本つまらないけど、一度読み始めたから最後まで読まなきゃ」
  • 「このダイエット法は効果なさそうだけど、高い料金を支払ったからつづけなきゃ」

2-5 現在志向バイアス

未来のことより「いま目の前」のことを優先してしまう心理。

  • 「健康に悪いのは知ってるけど、お酒もタバコもたしなんでしまう」
  • 「すぐに支払いしたほうが得だけど、ついついリボ払いにしてしまう」

2-6 平均以上効果

「自分は平均より優れてる」と思い込む残念な心理。

  • 「私は普通の人より車の運転は得意なほうです」
  • 「私は普通の人より感受性豊かです」

2-7 ダニング・クルーガー効果

「ダメな奴ほど自分を優秀だと思ってる」残念な心理。

  • 「ちっ、前の車の運転下手だなー。下手くそは路上に出んなよ」
  • 「あぁバイアスのことね、知ってる知ってる。前に本で読んだから(1冊だけ)」

2-8 隠れナルシストバイアス

「自分は能力があるのに誰も認めてくれない」と勘違いする残念な心理。

  • 「なんであんなクソ歌流行るかなぁ、オレが変わりに作詞してやりてぇー」
  • 「あのYou Tuberが人気な理由がわからんわぁー。あんなの誰でもできるし」

2-9 感情バイアス

自分が信じたいことに有利な情報しか認めなくなる心理。

  • 「あのキーパーはダメだ!活躍したって?たまたまだよそんなの!」
  • 「ほらミスした!(他の選手もミスしてたとしてもそれは見えない)」

2-10 流暢性の罠

「なるほど!」と腑に落ちたことを「理解した」と勘違いする心理。

  • 「心理学の本を読み終えた。これで心理学はバッチリだ」
  • 「わかりやすいビジネスセミナー動画を見た。これでビジネスはバッチリだ」

2-11 単純緊急性効果

重要なことより「早く終わること」「もうすぐ終わること」を優先してしまう心理。

  • 「本当は勉強しなきゃいけないのに、部屋の掃除をしてしまった」
  • 「全然いらないのに、タイムセールだから商品を買ってしまった」

2-12 自己奉仕バイアス

「成功は自分のおかげ、失敗は他人のせい」という心理。

  • 「今日は一日楽しく過ごせたぞ、スケジューリングを見直したおかげかな」
  • 「今日は最悪の一日だった!大嫌いなクライアントの相手をしたせいだ」

2-13 モラル・ライセイシング

良いことをしたあとは、多少のズルや怠惰は許されると思ってしまう心理。

  • 「今日はトレーニングを頑張っから、ダイエット中だけどケーキを食べてOK」
  • 「いつもパートナーのために働いてるんだから、浮気の一つぐらい許されるはず」

2-14 どうにでもなれ効果

1つの計画が倒れたことを発端に、すべてヤケッぱちになってしまう心理。

  • 「ダイエット中だけど甘いもの食べちゃった。えーい、今日は好きなだけ食べちゃえ」
  • 「好きなだけ食べてたら映画みたくなったな。貯金くずして映画館ハシゴじゃー」

2-15 プロジェクション・バイアス

いまの感情や状態が未来までつづくと思ってしまう残念な心理。

  • 「彼女のこと大好き!腕に彼女の名前のタトゥーを彫っちゃうぜ☆」
  • 「お腹空いたなぁ、あれもこれも買っちゃおう(そして食べきれない)」

2-16 正常性バイアス

異常事態が起きても「自分は大丈夫だろ」と思ってしまう心理。

  • 「オレオレ詐欺なんかに、ひっかかる人いるのかねぇ(そしてひっかかる)」
  • 「大雨で避難指示が出てるけど、30年なにもなかったし平気だろ(ドドド…)」

2-17 ハロー効果

1つのことだけで、すべてを判断してしまう心理。

  • 「あの人は英語できるし、きっと他の能力も高いに違いない」
  • 「あの人は不愛想だ、きっと性根が腐ってるに違いない」

2-18 メモリーバイアス

記憶の中の「最悪の体験」を判断の基準にしてしまう心理。

  • 「過去にクレーマーで嫌な思いしたから、接客業はぜんぶやりたくない」
  • 「ラーメンに虫が入ってた!飲食店はすべて危険だ」

2-19 完璧主義バイアス

100%正しい判断を探し求めてしまう心理のこと。

  • 「かれこれ1時間買い物を迷っている。もっといい商品があるかもしれない」
  • 「こんな作品じゃ称賛されない。完璧なアイデアを思いついてから執筆しよう」

2-20 人気優先バイアス

物事の良し悪しを「大衆の支持率」で判断してしまう心理。

  • 「この動画は低評価のほうが多い。きっと悪い動画に違いない」
  • 「オリコン1位で売れた曲だから、一番いい曲に違いない」

2-21 後知恵バイアス

「こうなると思ってたんだよ」と、賢者ぶりたがる残念な心理。

  • 「あの映画はコケると思ってんだよ。考えなくても誰でもわかる」
  • 「あの漫画は流行ると思ってたよ。第一話から輝きが違ったからね」

2-22 価値フィルタバイアス

自分の価値観で、一方的に他人の性質を決めつける残念な心理。

  • 「友達少ないなんてかわいそう…。きっと寂しいよね☆友達つくろうよ☆」
  • 「女はみんな感情的だから、大事な仕事は任せられん!」

2-23 潜在的差別バイアス

自分より立場が弱いと感じた弱者を見下す残念な心理のこと。

  • 例:友達やパートナーには優しいが、レジの店員さんにはやたら厳しい
  • 例:成功した実業家をやたら褒めたたえるが、非正社員にはやたら厳しい

2-24 嫌儲バイアス

「お金儲けは汚い」「金持ちは悪者」という残念な心理のこと。

  • 「応援してたYou Tuberが有料メンバーシップをはじめた!金のことしか考えてない!もう応援しない!」
  • 「企業の社長はみんな卑しい人間にちがいない」

2-25 エイジングギャップバイアス

物事は「年齢や年代に左右される」と思いやすい心理のこと。

  • 「もう歳だから、新しいチャレンジをしても覚えられない」
  • 「俺たちは若い世代だから、デジタルデバイスの扱いには長けている」

2-26 変人=アーティスト評価バイアス

変わった人がつくる作品は優れてるに違いないと思いやすい心理のこと。

  • 「あのアーティストは壮絶な人生をおくってるだけあって、曲に深みがある」
  • 「あのアーティストのエピソードはウソだった!曲もぜんぶクソだ!」

2-27 ファミリアリティ

自分が知ってる人と似た顔を見ると「性格も似てるに違いない」と思ってしまう心理。

  • 「大嫌いな上司に似た顔をしてる。きっと嫌な性格に違いない」
  • 「釣り目はみんな卑しいことを考えそうだ」

2-28 インポスターシンドローム

別名、詐欺師症候群。自分の実力を疑いすぎてしまう心理のこと。

  • 「成功しても、いつか自分が無能とバレそうで怖い…」
  • 「自分がやってることなんて、誰にでもできる無価値なものだ」

2-29 楽観バイアス

根拠はないが「未来は今より良くなってる」と思ってしまう心理。

  • 就職したらきっと幸せになる
  • 結婚したらきっと幸せになる

2-30 ボリアンナ効果

過去の体験の嫌なことは忘れて良かったことだけ誇張する心理。

  • 昭和は良かった。それに比べて平成は…
  • 平成は良かった。それに比べて令和は…

2-31 快楽の踏み車

良いことがあっても、すぐ刺激になれて「もっと足りない」と思う心理。

  • 望みどおり結婚した。でも本当にこれが幸せなんだろうか
  • お金もある、仕事もある。でも、どこか心にぽっかり穴が開いてる気分

2-32 プラットフォール効果

能力がある人が失敗するとお茶目に見えるが、能力がない人が失敗するとバカに見える心理。

  • 完璧超人の●●さんでもミスするんだ!なんかカワイイ!
  • あいつまたミスしてるよ、アホだなー

2-33 クラスター錯覚

法則がない物事に法則を作り出そうとしてしまう心理。

  • 私が成功したのは毎日〇〇神社に通ったからです!
  • 性犯罪が増える理由はエロ漫画が増えたからだ!

2-34 公正世界仮説

行いには正当な対価が返ってくるものであると考えてしまう心理。

  • 努力した人(自分)は報われなきゃおかしい
  • 悪いことした奴にはバチが当たって当たり前

3 「人の心理」が学べるおすすめ本3選

恒例の本日のおすすめ本紹介コーナーです。

今回は、バイアスについて学べる本3冊と、登場人物の心理描写がリアルなマンガ3選をご紹介します。

3-1 Think Smart 間違った思い込みを避けて、賢く生き抜くための思考法

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Think Smart 間違った思い込みを避けて、賢く生き抜くための思考法

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「みんなが正しいと思い込んでいるが統計では否定されてること」が学べる本です。読んでると「自分って先入観で物事を判断しまくってんだなー」と気づかされます。

一つ一つの項目が短くて読みやすいので、移動中にサクっと読みたいときにいいかもしれません。

3-2 インサイト いまの自分を正しく知り、仕事と人生を劇的に変える自己認識の力

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インサイト いまの自分を正しく知り、仕事と人生を劇的に変える自己認識の力

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「自分の能力や性格を正しく把握する方法」が学べる本です。これを読むと「自分のことは自分が一番よくわかる」という言葉が大嘘であることに気づかされますな。

自分がやりたいことがわからない…という悩みがある場合も読んでみることをおすすめします。

3-3 予想通りに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」

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予想通りに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」

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「人間ってめっちゃ不合理だよ」「でもそれに自分では気づけないよ」ということが学べる行動経済学の名著です。

不合理な行動で損することが多い方におすすめ。

4 「キャラの心理」がリアルなマンガ3選

つづいて、登場人物の人間くささがリアルな漫画を3タイトルご紹介します。

4-1 闇金ウシジマくん

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闇金ウシジマくん

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登場人物がクズばかりで有名な闇金マンガです。

たとえば第1話で、幼い息子のためにパチスロを卒業すると心に誓った母親が、誘惑に負けてパチンコ屋に入店しようとする描写はリアルでゾクゾクしますな。

そういや自分も1時間前に「カフェイン絶ちするぞ!」と決意したばかりなのに早速コーヒー飲んでます。人の意志力なんてそんなもんでしょう。

4-2 最強伝説黒沢

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最強伝説黒沢

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「カイジ」で有名な福本伸行先生の名作漫画です。

働く大人(とくに男性)は、人間くさいおっさん主人公黒沢の言動に思わず共感してしまう場面が多いのではないかと。ちなみに自分は何度も号泣しました。

4-3 進撃の巨人

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進撃の巨人

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説明不要な名作ですが、進撃の巨人もキャラの心理がリアルで有名です。

たとえば1巻では、巨人と闘おうとしたハンネスさんがいざ巨人を見たらビビって逃げ出したり、子供たちを逃がした母親が小さい声で「行かないで」とつぶやくシーンはとてもリアリティがあって好きですね。

以上です。

もくじ