クリエイターが金を稼ぐと嫌われる嫌儲バイアス対処法

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クリエイターなら誰でも「好きなことが収入になればな」と想像したことがあるでしょう。

ただ人の脳には「金儲けは汚い」と思い込む性質(嫌儲バイアス)が備わっていて(※1)、とくに「好きなことで収入を得ている人」ほど「金を得るなどけしからん!」と思われやすい(※2)そうな。

たとえば有料メンバーシップをはじめたYouTuberが「金のためにやってる!」と叩かれる現象はまさに象徴的なケースかと。もちろん、嫌儲バイアスは他人事ではなく「自分にも、他人にも備わってるもの」なのが怖いところです。

てことで今回は「嫌儲バイアスの基礎知識と対処法」をご紹介します。

前述したように、クリエイターは「やりがい搾取」されやすい業種です。正当な報酬と権利を得たい方は参考程度に。

ちなみに「嫌儲」は「けんもう」「けんちょ」と読まれますが、私は「けんもう」で統一しています。

1 嫌儲バイアスの正体とは

さて、まずは嫌儲バイアスの正体を考察しましょう。

「江戸時代の政策の影響で日本人は金儲けに卑しい印象を抱くようになった」という説を聞くこともありますが、言わずもがな嫌儲バイアスは日本人だけの性質ではありませんし、「貧乏人の嫉妬」のように単純なことでもありませんん。

年代、国籍、生活圏を問わず「人の脳に生まれながらに備わった性質」(※1)という説が有力です。

「バイアス」とは進化の過程で脳に備わった認知の歪みのこと。

とりあえず「脳のバグ」みたいなものとイメージしておけば問題ありません。

1-1 嫌儲バイアス誕生の経緯

嫌儲バイアスは人類が洞穴でウホウホ生活していた時代に生まれたのでは?という説が有力です。

この時代は食料や居住区が貴重だったので、それを独り占めする(現代でいう金儲け)行為は群れの全滅を招く危険な行為でした。

なので群れの中で独り占めする人物を締め出すように嫌儲バイアスが備わったのでは?というのが進化論的な見方だそうな。なるほど。

もちろんこれは数百万年前での話。現代ではまるっきり状況が違います。

とくに現代日本のように自由競争社会を生き抜くには、嫌儲バイアスはデメリットとして働くことが多いので厄介です。

たとえば、ラーメン屋が儲けられなきゃラーメン市場は絶滅するし、YouTuberが儲けられなきゃYouTubeは過疎化するし、ゲームが儲からなきゃゲーム産業は衰退するでしょう。

1-2 嫌儲バイアス3つのデメリット

冒頭で紹介した研究によると、嫌儲バイアスは以下3つの性質がわることがわかっています。

  • 嫌儲バイアスの効果
  • 「儲かってる」だけで印象が悪くなる
  • 「営利目的」と思われるだけで印象が悪くなる
  • 「好きなことで儲けてる人」ほどやりがい搾取されやすい

言わずもがな、クリエイターが創作活動をするうえではデメリットばかりなので対策を考えたほうがよさそうです。

2 嫌儲バイアス対処法(売り手編)

前述した3つのデメリットへの対策案を考えてみましょう。

2-1 「儲かってる印象」を出さない

儲かっている印象を出すのはやめたほうが賢明です。

エラスムス大学がおこなった実験(※1)では、儲けてる印象がある企業ほど「悪いことをしているに違いない」など印象が悪くなる傾向がありました。

よって「●●万円稼ぎました」「●●万円使いました」などの発信はメリットよりデメリットのほうが大きそうなのでやめたほうが無難かと思います。

逆に、ファンやフォロワーなど第三者から「支持されている証拠を示す」のは良い戦略です。

儲かっている印象ではなくファンが多い印象で権威を表明するわけですな。

言わずもがなファンの声を偽造したりするのはNGなので、あくまで自然発生的に生まれたツイートなどをピックアップするとよいかと。

2-2 「営利目的ではない」と印象づける

「活動は営利目的ではなく大儀がある」と印象づけたほうがよさそうです。

たとえば「YouTubeで生活費を稼ぎたいのは事実だけど、自分はお笑い動画に救われた経験があるから、一人でも多くの人を笑いで救えたらいいなと思っている」みたいな感じですね。

再びエラスムス大学の研究を参照しましょう。まったく同じコーヒーを販売している企業の活動理念を「営利目的」「非営利目的」の2パターン用意し、印象がどう変わるか調べた実験です。

結果はもちろん営利目的なら「社会に害悪」「メリットがない」などネガティブに思わる傾向にありました。

YouTuberが儲けだしたり、メンバーシップを始めた途端に叩かれるのはこういう心理なのでしょう。こちらの活動に変化がなくても「営利目的」と判断されてしまうと評価が下落するわけです。

研究チームは対策法として「営利目的での活動の長期的メリットに目を向けてもらう他ない」と述べています。

つまり「営利目的は事実だけど、金をもらえなくてもやる理由がある」みたいな大儀があれば、納得してもらいやすくなるわけですな。

余談ですが私の活動には「クリエイターがまだ見ぬファンと出会えるキッカケを提供したい」という理念があります(という大義をアピールしておく)

2-3 「お金がほしい」ことはしっかり発信する

とはいえ「お金がほしい」ことは包み隠さず発信したほうがいいでしょう。

営利目的の活動の印象が悪いとはいえ「大切なのはお金じゃありません(キリッ」みたいなことばかり言ってると、いざ利益をえようとしたときのネガティブな印象が増してしまうからです。

心理学者アーロン・ケイなどの研究(※2)によると「人は好きなことをやってる人には『好きなことやってんだから無報酬でもいいでしょ』的なことを思いやすい」ことがわかっています。

しかもアーティストやクリエイターなど「情熱的な人が多そうな業種」ほどそのように見られる傾向にあるとのこと。うーん、わかる気がするなー。

「金をもらえなくても好きだからやってるんです」という姿勢にはメリットもありますが、やりすぎると逆効果になり、利益を得たときの悪い印象が増してしまうわけですな。

てなわけでイラストや映像の仕事をやるときはクライアントに対して「情熱があるんでがんばります!」という姿勢を見せるより「対価はしっかり貰います」という姿勢をアピールしたほうが良さげです。

3 嫌儲バイアス対処法(自分編)

嫌儲バイアスは「自分に向けても発動してしまう」ことがわかっています。

たとえば仕事に情熱をもっていた社員にボーナスをあげると情熱が枯れてしまう現象が度々確認されていまして、どうやら私らは「金のために働いている」という意識をもつとモチベーションが低下するみたいなんですよ。

とくにクリエイターのように内向的な性格の人ほど「金のために働く罪悪感」を感じやすく、以下のようにモチベーション低下しやすくなります。

  1. 好きで創作活動をしていた
  2. このとき脳は「作ること」をご褒美として反応している
  3. 「お金や評価」というご褒美をもらえるようになった
  4. 「お金や評価」というご褒美にしか脳が反応しなくなる
  5. 「作ること」が楽しくなくなる

「ゲームが好きだからゲーム実況をはじめたのに再生数が伸びないから楽しくない…」みたいなのが典型的ですね。すごくよくわかる(笑)

対策法を考えていきましょう。

3-1 「大儀」のために活動する

罪悪感を和らげるには「自己超越目標」が役立つそうです。

自己超越目標とは「自分は活動を通じて世の中に●●な貢献をしたいんだ」という目標のことですね。自分の利益のためだけではなく、家族や世間など「他者への貢献」がともなう活動のほうがモチベーションが上がりやすいそうです。

メカニズムは以下のとおり。

  1. 誰かのために作品をつくった
  2. 感謝が返ってくる
  3. 「自分は役に立つ価値ある人間だ!」
  4. 自尊心を強くなりイキイキしてくる

こういったデータはアダム・グラントの名著「GIVE&TAKE 与える人ほど成功する時代」が参考になると思うので参考程度に。

3-2 「いいね」のために活動しない

「いいね」「高評価」「再生数」などを成功の指針にしないことも大切です。

SNSのいいねや高評価をもらったときに脳が感じる快感は「お金をもらったときと同レベル(※3)」だそうで、いいね!高評価!再生数が欲しい!というモチベで作品投稿することの本質は金のために作品投稿することと変わりありません。

  1. 「いいね」がもらえることしかやらなくなる
  2. 自分が本来やりたかったことができなくなる
  3. 罪悪感でモチベーション低下

まぁ評価の数をまったく気にしないのは無理ですし、創作をビジネスにしたいなら顧客が好むコンテンツのリサーチも必要なので困りますが、やはり「いいねがもらえなくても自分の活動には価値がある」と思える自己超越目標がキーになりそうですね。

まとめ

てことで結論まとめると、以下のようなかんじです。

  1. 嫌儲バイアスは誰にでも備わっている
  2. ただ人は「お金を超越した活動」には喜んでお金を支払う
  3. 「他者への貢献」は活動のモチベーションを上げてくれる

営利目的で活動すると一定数の人に嫌がられるものの、ちゃんと価値を届ける活動をしていれば、そこに支援者は集まるってことですね。納得の結論でございます。

もしクリエイターの立場なら「人に価値を提供してるんだ!」と考えれば自尊心を保ててグッド。お客の立場なら好きなクリエイターに投げ銭感覚でお金を届けてあげれば「その人の活動を支えてるんだ!」という自尊心が高まっていいかもしれません。

以上です。

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