「絵を上手く描こうと思うと辛くなる」心理学的な原因と対策法

「絵を上手く描こうと思い過ぎて、描くことが楽しくなくなった」

という経験がある方は多いのではないかと。イラストだけでなくブログでも何でもそうでしょう。

私も音楽をやってた頃は「えーい、こんな曲じゃだめだ!もっとキャッチーじゃないと!」と思い過ぎて作曲の楽しさが低下。モチベーションが崩壊して、作曲ペースが鈍った経験があります。

とはいえ、メンタルやモチベーションの管理は奥が深いもの。巷で言われる解決策が裏目に出ることが往々にしてあります。

てことで今回は「絵を上手く描こうと思うと辛くなる」心理学的な原因と対策法3選を考察してみました。

楽しいモチベーションを保ちつつ、創作活動を続けたい方は参考程度に。

1 原因1:他人と自分と比べ過ぎてしまうから

「上手く描こうと思うと辛くなる」最大の原因といえば「他人との比較」でしょう。

他人との比較が人を不幸にすることは当サイトでは何度も述べているとおり。ダルハウジー大学等のメタ分析[1][2]から察するに、創作活動に以下のような悪影響が出ることが指摘されています。

  • 失敗や批判を恐れるあまり行動できない
  • 他人からの期待に応えるため「成功」の基準を高くしすぎる
  • 自分のやたら高すぎる基準を周囲にも求める

たとえば絵描きなら以下のような心理状態になっちゃうわけですな。

  1. 絵を描いたけど周囲の人に比べて自分は下手だ
  2. 下手な箇所をコメントでつっこまれそうだから投稿したくない
  3. もっと完璧にしなきゃ

うーん、いかにもメンタルに悪そうなかんじです。

1-1 比較癖の対策法

比較癖の対策は「ぶっちゃけかなりむずかしい」です。

というのも「自分と他人を比較する」のは、人類数万年の進化の過程で脳に刻み込まれたシステムなので、精神論で立ち向かうのは無理ゲーなんですよ。

本気で比較癖をなんとかしたいなら、修行僧が積むような専門的なトレーニングをコツコツやってみるといいかもしれません。

「無 最高の状態」という本がおすすめです。

2 原因2:そもそも練習は「楽しくない」のが普通だから

もう1つ「上手く描こうと思うと辛くなる」原因としてありがちなのが「好きなことは楽しくないといけない」という思い込みです。

というのも心理学では「物事を上達するための練習は『楽しくないのが普通』」というのが有名なんですよ。

書籍「超一流になるには才能か?努力か?」の著者アンダース・エリクソン博士がバイオリニストを目指す学生を対象におこなった研究を参照しましょう。

この実験に参加した学生たちは皆バイオリンが好きで優秀な音楽家なものの「ぶっちゃけ練習は楽しくない、というか苦痛」と答えているんですよ。

似たようなデータは他にもあり[1]、ようするに「上手くなろうと思って練習するには真剣に集中しなきゃいけないから、楽しんでる余裕なんかない」わけでな。

てことで、どうやら巷に言われがちな「好きなことを楽しみながらやろうよ☆そうすれば自然と上手くなるから♪」というのはただの希望的憶測という説が有力です。

そういえばサッカーの中田英寿さんや、野球のイチローさんも「練習は大嫌い」と公言してましたしね。

エリクソン教授の見解は以下のとおり。

物事を上達するには、常に現在の能力をわずかに上回る課題に挑戦する努力が求められる。よって、練習は一般的に「楽しくない」ものである。

ざっくり言うと、こういうことです。

  • できることをやる→上達しない
  • できないことをやる→上達するけど楽しくない

てことで「上手くなろうと思って練習することは、そもそも楽しくないものである」という現実を受け入れるのは大切かなーと思います。

逆に「上手くなれなくてもいいから楽しもう」と思ってしまうと、物事の継続に最重要な「上達への意欲」が失われてしまい、結果的に好きでやってたことが好きじゃなくなってしまう可能性もあるのでご注意あれ。

2-1 「楽しくない」の対策

とはいえ「大好きなことを『楽しくなくても受け入れろ』なんて無理!」という意見もあるでしょう。つーか、私もそう思います(笑)

ということで私が普段からやってる対策をいくつかご紹介します。

2-1-1 ゲーミフィケーション

楽しくないタスクに「楽しさ」を生み出す方法といえば「ゲーミフィケーション」が有名でしょう。

ゲーミフィケーションとは、体験をゲーム化し楽しく取り組めるようにするアイデアのこと。たとえば最近話題の「ゲームでプログラミングを学ぶ」というアイデアが象徴的ですな。

詳しいやり方は「仕事も勉強も楽しくなる!ゲーミフィケーションのやり方を解説」でガッツリまとめてるので、興味があればどうぞ。

2-1-2 上達のためのお絵描きと、趣味のお絵かきを明確に分ける

まずは「練習」と「趣味」を明確に分けてしまう方法です。

ようするに「上達を目的とせず、ただ好きなことを好きなように描く時間」を設けてみるわけですな。

私の場合はゲーム用のドット絵などの素材を描くときは「趣味」と割り切って楽しむことにしています。

3 原因3:アンダーマイニング効果

「上手く描こうと思うと辛くなる」原因3つ目は「アンダーマイニング効果」です。

アンダーマイニング効果とは「好きでやってることに対して評価や報酬を絡むとモチベーションが失われる」現象のこと。たとえば、以下のようなケースを想像すると分かりやすいのではないかと思います。

  1. 最初は好きで絵を描いていた
  2. pixivに投稿したら「いいね!」がついた
  3. 次に絵を投稿したら「いいね!」がつかなかった
  4. 「いいね!」が付く絵を投稿しようと思うあまり、自由に好きな絵が描けなくなった

同じようなことは、YouTubeでもブログでも何でも起こり得るのではないかと。

とくに内向的な性格の人ほどアンダーマイニング効果が発動しやすいことがわかってるので、好きな気持ちを維持したいならケアが必要です。

3-1 アンダーマイニング効果の対策法

アンダーマイニング効果への対策は中々むずかしいんですが、以下2つが良いかと。

3-1-1 「評価」を遠ざける

最も現実的かつ効果が期待できるのは「いいね」や「コメント」を見ないことです。

ピカソも述べているように「才能を守るために孤独を貫く」わけですな。

評価を遠ざけることができるようになると、アンチやめんどくさい奴に絡まれることもなくなるので、余計なストレスを抱える心配も減ります。

まぁ、とはいえ

てのが正直なところでしょう。私だってやっぱり「いいね」が付けば嬉しいし、好意的な応援コメントがあれば見たくなってしまいます。

前述した「デタッチド・マインドフルネス」などをトレーニングすれば多少マシになるものの、他人からの評価が気になるのは遺伝子に刻まれた人間の根源的欲求なので抗うのはむずかしいです。

3-1-2 評価が気になったら「価値観」を振り返る

てことで現実的なのは「評価が気になったら価値観を振り返る」ことでしょう。

つまり、以下のようなことを自分に問いかけるわけですね。

  • 「そもそも自分はなんで絵を描いたんだっけ?」
  • 「自分はなにを目指して今の行動をしているんだろう」

このように、自分を突き動かしていた価値観(内発的動機)を定期的に思い返せば、アンダーマイニング効果が和らぐのではないかと。

以上です。